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カップリング表記の基本

カップリング表記研究家のタルトです。
コミケカタログのサークルカットからカップリング表記を
抜き出して集計する研究を日々行っています。

現在の調査量としては
・調査対象
 1982年夏コミ(C21)~2001年冬コミ(C61)
 2013年夏コミ(C84)~2016年夏コミ(C90)
・延べ 82万サークル
・カップリング表記数 29万件
となっています。(2016年10月現在)

まだまだ引き続き調査中ですが、ある程度データも集まってきましたので
ここで改めてカップリング表記の定義と分類をまとめてみます。

もちろんカップリング表記に込められた意図や想いは書いた人によって異なるので
すべての状況を網羅した完璧な一つの正解を出すことは不可能です。
ここではあくまで「概論」ということでご了承ください。

カップリング表記の定義

普段使い慣れてはいても、改めて考えると難しいテーマです。
まずは「カップリング」と「表記」の2つに分けて考えてみます。

カップリング=関係性を与えること

「カップル」という単語には「2つのものを一組にする」という意味があります。
ここでの2つのものというのは、通常2人のキャラクター(もしくは人物)で、
「一組にする」とはそこに何らかの「関係性を持たせる」ということです。

例えばAさんとBさんがいたら

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この2人に関係性を与えて

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とするのがカップリングということになります。

ここでの「関係性」には主に恋愛が入りますが、友情などもありえます。

表記とは

表記とは「文字や記号を用いて書き表すこと/表したもの」です。

つまりカップリング表記とは

以上をまとめると、カップリング表記とは

「2人のキャラクターとそこに与えた関係性を
 文字や記号を用いて書き表したもの」

となります。

※ここテストに出ます

カップリング表記の構成要素

カップリング表記は原則として、以下の条件を満たします。

「キャラクターA」「キャラクターB」「関係性」の3つの要素から成立
「文字・記号」のみで成立(理解にイラストが必要な物は含まない)

一般的に、各構成要素は以下のように対応しています。

・キャラA → 攻めキャラ
・キャラB → 受けキャラ
・関係性  → 記号

カップリング表記の種類(記法)

カップリング表記はその書き方(記法)で大きく5つのパターンに分かれます。

①記号を使うもの
②記号を使わないもの
③攻めと受け
④各作品固有のもの
⑤特殊なもの

※以下、記法の分類・名称は筆者の論文
 『1980年代のコミックマーケットカタログにおけるカップリング表記の変遷(BL・やおい)』
 (日本マンガ学会発行『マンガ研究 vol.20』に掲載)
 に基づきます。

①記号を使うもの

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ブラウザゲーム『刀剣乱舞-ONLINE-』から、「三日月宗近」と「鶴丸国永」の
2人のキャラクターのカップリング表記「三日月×鶴丸」を例に挙げました。
この表記では「三日月宗近」と「鶴丸国永」の2人が恋愛関係にある
ということが表現されています。

構成要素に注目すると、前述の定義に則し、
「三日月」「鶴丸」という2人のキャラクターと、
その関係性を示す「×(かける)記号」の
3つの構成要素から成り立っていることが分かります。

この例では、関係性を示す記号に「×」が使用されていますが、
他にも「+」「❤」「→」「*」「&」「/」など様々な記号がここに入ります。
その際、「×」であれば「×表記」(かけるひょうき)
「❤」であれば「❤表記」(はーとひょうき)と呼びます(他の記号も同様)。

それぞれの記号が意味する内容(愛情なのか友情なのかなど)は使う人の定義によるので、
ここでは言及しません。
「×は愛情」「+は友情」など、ある程度の共通認識はありますが、
使う人によって意味合いが異なると考えたほうが安全です。

この「記号を使う表記」がカップリング表記の基本形となります。

通常、記号の左側に書かれるキャラクターが「攻め」、
右側に書かれるキャラクターが「受け」と呼ばれます。

②記号を使わないもの

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「みかつる」という平仮名4文字で、①の「三日月×鶴丸」と同じ内容を表記しています。

カップリング表記の基本形から「記号」が省略され
「攻めキャラ」「受けキャラ」の2つの構成要素だけから成り立っています。
これを「連結表記」と呼びます。

「連結表記」を使う際、キャラクターの名前は短縮されるのが通例です(1~2音)。
ここでも「三日月」は「みか」の2文字2音に、
「鶴丸」は「つる」の2文字2音に短縮されています。

この「連結表記」が近年最も使われているカップリング表記となっています。
(根拠となるデータは前述の論文と後述の同人誌に掲載)

③攻めと受け

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「連結表記」では「記号」が省略されていましたが、
ここでは、キャラクターの片方が省略されています。

このパターンには以下の2種類があります。
・「攻めキャラ」+「記号(攻)」で構成される「攻め表記」
・「受けキャラ」+「記号(受)」で構成される「受け表記」

主にカップリング相手が複数いる場合、
もしくは決まっていない(フレキシブルに変化する)場合に用いられます。
また、大量に相手がいる場合は「総攻め」「総受け」と表記されます。

④各作品固有のもの

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2015年のアニメ『おそ松さん』から「松野カラ松」と
「松野一松」のカップリング表記「色松」を例に挙げました。

これまでの表記とは全く異なるパターンで、
「攻めキャラ」「記号」「受けキャラ」の全ての要素が入っていないものの、
カップリング表記として成立しているものです。

なぜ成立しているのかというと、カラ松と一松の連結表記「カラ一(からいち)」が
一見「カラー(からー:色)」に見えるためです。
そこから転じて『おそ松さん』界隈では「色松」といえば、
カラ松と一松のふたりを指す慣習が出来ています。

ただし、その成り立ちとは異なり、単に「色松」と言った場合
「カラ松×一松」とは限らない(一松×カラ松かもしれない)点に注意が必要です。

このように、カップリング内容を理解するために
作品固有の知識が必要になることから、この記法を「固有表記」と呼びます。

固有表記の場合、恋愛的な要素がなく単純に2人を(コンビとして)まとめて言う際にも使われ、
カップリング表記とは区別する場合もありますが、
「2人に関係性を与える」という性質を満たすため、
ここでは全てカップリング表記として取り扱っています。

固有表記は基本的にどちらのキャラクターが受けなのか分からないのも特徴で、
攻め受けを明示するために「色松(一松受)」など他の表記と併記するケースも見られます。

■サンド表記
サンド表記については改めて別にまとめます。

⑤特殊なもの

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相合傘です。
これをカップリング表記とするかは意見の分かれるところだと思いますが、
「攻めキャラ」「記号(傘)」「受けキャラ」の3つの要素を満たしているため、
ここではカップリング表記として扱っています。
これを「傘表記」と呼びます。

■複合型
その他の特殊なものとしては、「三日月×鶴丸+小狐丸」など、
記号を複数使った表記があります。
原則2人で構成されるカップリング表記に、新たな「小狐丸」というキャラクターが登場し、
キャラクターが3人になっています。
ここではこれを「三日月×鶴丸」「鶴丸+小狐丸」の2つのカップリング表記が
融合したものと考え、1つのカップリング表記として扱っています。
これを、使用している記号から「×+表記」(かけるぷらすひょうき)と呼びます。
他の記号の場合も同様です。

■リバーシブル
リバ表記についてはパターンが多いため、改めて別にまとめます。

■ハーレム・総当り・総愛され
例えば「三日月ハーレム」という表記があった場合、
ここでは「総攻め」と同義の表記として「ハーレム表記」に分類しています。

同様に「総当り」「総愛され」は「総受け」と同義の表記として
「総当り表記」「総愛され表記」に分類しています。

以上がカップリング表記の基本的な定義と分類になります

カップリング表記はコミケカタログの中だけでも
既に35年以上は使われており、時代ごとにその意味や
記法のトレンドなどが変化し続けています。

そして現代ではそれに加えてpixivやニコニコ動画などのタグ文化も
並行して発展しており、相互に関係しつつもそれぞれ独自の要素もあり
全体が掴みにくくなっている状況です。

そんな中でカップリング表記を一つの定義や分類でまとめることは難しいため
今後も調査の中で適宜分類の見直しは行っていく予定です。

今回はまず現時点の情報としてまとめておきます。

関連資料

カップリング表記の論文

『1980年代のコミックマーケットカタログにおけるカップリング表記の変遷(BL・やおい)』

マンガ研究 vol.20 第13回大会シンポジウムマンガとアジア

マンガ研究 vol.20 第13回大会シンポジウムマンガとアジア

真夜中のニャーゴ『金田×タルト「カップリング40年史」』

フジテレビオンデマンドの『真夜中のニャーゴ』で放送された
コミケカタログに見るカップリング表記史です。(2016年6月10日放送)
www.houdoukyoku.jp

カップリング表記研究の同人誌

カップリング表記の研究成果を同人誌としてまとめています。
夏冬のコミケにて頒布を行いつつ、平時はCOMIC ZINさんに委託しています。

COMIC ZIN(サークル:あまあまくろにくる)

1990年代のカップリング表記データ

1990年代のカップリング表記データをこちらにまとめています。
カップリング表記-1990年代 カテゴリーの記事一覧 - あまあまくろにくる