【コミケカタログで90年代のカップリングを調べてみた】第五回:1993年に吹き荒れる維新の嵐!

少し間が空きましたが、コミケカタログのサークルカットからカップリング表記を抜き出して
集計してみたかんじの記事、第五回目です。
今回は1993年を見ていきます。

1993年のコミケ

夏(C44)と冬(C45)の2回開催されました。

↓当時のコミケカタログはこちら
 

開催場所と参加人数の推移

回数 季節 会場 日数 サークル 参加人数
C38 1990 幕張メッセ 2 13,000 230,000
C39   幕張メッセ 2 13,000 250,000
C40 1991 東京国際見本市会場(晴海) 2 11,000 200,000
C41   東京国際見本市会場(晴海) 2 14,000 200,000
C42 1992 東京国際見本市会場(晴海) 2 12,000 250,000
C43   東京国際見本市会場(晴海) 2 15,000 180,000
C44 1993 東京国際見本市会場(晴海) 2 15,000 250,000
C45 東京国際見本市会場(晴海) 2 16,000 200,000

91年と92年の夏コミはサークル数が減っていましたが
93年の夏コミは前年冬と同じ15,000サークル。
そして冬コミはそこから1,000サークル増加しています。

93-1:カップリング表記数の推移

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参加サークル数が減った回(C40・42)以外は増加の一途です。

カップリング表記サークル数の推移

カップリング表記を書いているサークルの数を調べてみました。
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※表記サークル率=表記サークル数/全サークル数[%]

93年は全体で約15%のサークルがカップリング表記を書いていました。
C43→C44では2.3%と大きく増えています。
その反動か、冬コミ(C45)では0.4%の増加に留まっています。

参考までに、2013年(C84・85)の表記サークル率は37.7%でしたので
ここからまだまだ上がっていくことが予想されます。

93-2:記法別ランキング

カップリング表記の記法(書き方)別のランキングです。

順位 C44 表記数 構成比 C45 表記数 構成比
1 × 1,295 43.2% × 1,615 48.9%
2 514 17.1% 576 17.4%
3 連結 500 16.7% 連結 411 12.4%
4 188 6.3% 212 6.4%
5 143 4.8% 150 4.5%
6 固有 128 4.3% 固有 120 3.6%
7 111 3.7% 90 2.7%
8 70 2.3% 70 2.1%
9 ハーレム 7 0.2% 14 0.4%
10 7 0.2% ハーレム 5 0.2%

「×」表記の増加

完全にトレンドは「×」表記に移行しています。
半分近いカップリング表記に「×」が使われている状況です。

C44→C45の構成比を見ると、連結表記が減った分
「×」表記が増えている印象です。

これは、主要作品の表記数推移と記法使用率を見てみると↓

作品名 C44表記数 C45表記数   × 連結
鎧伝サムライトルーパー 775 580 34% 30%
新世紀GPXサイバーフォーミュラ 517 372 63% 14%
幽遊白書 251 468 66% 3%
キャプテン翼 218 207 13% 38%
SLAMDUNK 84 308 72% 4%

・「征当」「伸遼」など、連結表記の使用率も高いトルーパーが
 表記数を落としたこと

・新興勢力の『幽遊白書』『SLAMDUNK』が連結表記を
 殆ど使わず、「×」をメインに使っていること

の2つが大きな原因と考えられます。

「*」表記が初登場

2013年の記法別ランキングでは5位だった「*」表記ですが
これまで初出がいつなのかが分かっていませんでした。
その「*」がC45(1993年冬コミ)で遂に初登場!


[コミケット45カタログ P.196より抜粋]

今でこそ表計算ソフトの影響で「*」が「×」と同じ意味で使われる
という認識がありますが、早くも1993年に登場していたのは意外でした。
もちろんWindows95の発売前です。(当時はWindows 3.1)

やはり初出は手書きではなく、パソコン/ワープロのようですね。

また、この時点では「使われた」というだけで
全く普及はしていません。(C45でもこの1サークルだけ)

リバーシブルの模索

近年リバーシブルと言えば「黄黒黄」とか「兎虎兎」みたいな
キャラクターAとBを「ABA」と並べて書く「連結リバ」記法がメジャーだと思います。
その連結リバがC45で初登場していました。


[コミケット45カタログ P.264より抜粋]

TMNで「木根ウツ木根」と書かれています。

また、リバーシブルを⇔(両矢印)で表現している方もいました↓


[コミケット45カタログ P.153より抜粋]

その他、記号などを用いずに「リバーシブル有」と書いてみたり
この年はリバの書き方をいろいろと模索している時期だったようです。

女体化表記

1993年は初出の表記が多いですね。
女体化の表記もこの年に初登場しています。

[コミケット44カタログ P.154より抜粋]

「当❤伸(♀)」と書かれています。
自嘲気味に汗マークがついてるのが可愛らしい。

女体化自体は以前からありましたが、カップリング表記に
組み込まれたのはこれが初めてです。

93-3:作品別ランキング

どんな作品が(カップリング表記的に)流行っているのか見ていきます。

順位 C44 表記数 構成比 C45 表記数 構成比
1 サムライトルーパー 775 25.9% サムライトルーパー 580 17.6%
2 サイバーフォーミュラ 517 17.2% 幽遊白書 468 14.2%
3 幽遊白書 251 8.4% サイバーフォーミュラ 372 11.3%
4 キャプテン翼 218 7.3% SLAMDUNK 308 9.3%
5 光GENJI 164 5.5% キャプテン翼 207 6.3%
6 聖闘士星矢 135 4.5% 炎の蜃気楼 158 4.8%
7 ドラゴンボール 106 3.5% 光GENJI 138 4.2%
8 炎の蜃気楼 94 3.1% 聖闘士星矢 113 3.4%
9 SLAMDUNK 84 2.8% ドラゴンボール 105 3.2%
10 SMAP 39 1.3% セーラームーン 57 1.7%

トルーパーが4年連続で首位をキープ!

1990年から続くサムライの時代に待ったをかけた
黒船サイバーフォーミュラをもってしてもトルーパーの牙城は崩せず。
そこに週刊少年ジャンプの薩摩と長州こと
『幽遊白書』と『SLAMDUNK』が同盟を組んで襲いかかる!
みたいな展開ですね。

それにしてもトルーパーは本放送後にOVAは出ているとはいえ
80年代の作品がここまでトップジャンルとして人気があるのはすごいですね。
サークルカットを見てるだけで、みんなから愛されてる様子が伝わってきます。

ミラージュにセーラームーン

注目作品としては、じわじわと人気が出てきている名作『炎の蜃気楼』。
そしてこれもまた伝説級の名作『美少女戦士セーラームーン』が遂にトップテン入り!
「クン×ゾイ」のBLカップリングも人気ですが、「レイ×亜美」「まこと×亜美」など
この時代には男性同士だけではなく、女性同士にもカップリング表記が使われていたことが分かります。
(初出はもっと前ですが、普及し始めたという意味で)

93-4:初めてカップリング表記が書かれた作品

この時代はかなり作品数が増加しています。

C44(1993年夏)

作品名 表記数 ジャンル
魍魎戦記MADARA摩陀羅弐 3 漫画
スプリガン 2 漫画
ハーメルンのバイオリン弾き 2 漫画
BASARA 1 漫画
ナニワ金融道 1 漫画
ハイスクール!奇面組 1 漫画
ペナントレース やまだたいちの奇蹟 1 漫画
ぼくの地球を守って 1 漫画
緑野原学園シリーズ 1 漫画

青年・少年・少女漫画と幅広いジャンルで出現。
少し遅い気もしますが、ぼく地球が登場してますね。
ハーメルンはアニメ化前です。

作品名 表記数 ジャンル
鉄人28号FX 5 アニメ
新ビックリマン 2 アニメ
勇者特急マイトガイン 2 アニメ
元気爆発ガンバルガー 1 アニメ

鉄人28号FXが出てきました。
「正人×三郎」が人気です。
勇者シリーズはマイトガインの時代へ。
まだ番組が始まったばかりなので、ブレイクはこの後です。

作品名 表記数 ジャンル
ファイナルファンタジー5 6 ゲーム
ドラゴンクエスト5 2 ゲーム
餓狼伝説シリーズ 2 ゲーム
ファイアーエムブレム外伝 1 ゲーム

ドラクエ・FFは5の時代です。
ビアンカかフローラかというよりヘンリーが人気。

そして格ゲーブーム真っ只中、カップリング界に餓狼伝説が登場。
シリーズとしては2で不知火舞とかキムが登場したあたりです。
1992年のアニメ化も影響してるかもしれません。

作品名 表記数 ジャンル
なんて素敵にジャパネスク 1 小説

小説はなんジャパだけ。

作品名 表記数 ジャンル
恐竜戦隊ジュウレンジャー 1 特撮
NIGHT HEAD 2 ドラマ
さすらい刑事旅情編 1 ドラマ
ダウンタウン 2 お笑い
SKIN 2 音楽
D'ERLANGER 1 音楽
DIE IN CRIES 1 音楽
LOUDNESS 1 音楽
M-AGE 1 音楽

個人的な注目は『NIGHT HEAD』。
当時は深夜番組とは思えない人気でした。

音楽ジャンルは黒っぽくなってきています。

C45(1993年冬)

作品名 表記数 ジャンル
BOY 2 漫画
俺はジュウベイ! 2 漫画
GS美神 極楽大作戦!! 1 漫画
アーシアン 1 漫画
グラップラー刃牙 1 漫画
ボンボン坂高校演劇部 1 漫画
マドモアゼル・モーツァルト 1 漫画
ロトの紋章 1 漫画
究極!!変態仮面 1 漫画
強殖装甲ガイバー 1 漫画
赤ちゃんと僕 1 漫画

夏に『ぼく地球』とくれば、もちろん冬には『赤僕』が!

そして『BOY』、『ボンボン坂』に『変態仮面』と、ジャンプは常に
新作をコンスタントに送り込んできています。

ガンガン枠では『ロト紋』にも注目です。

作品名 表記数 ジャンル
アニメ三国志 3 アニメ
疾風!アイアンリーガー 3 アニメ
忍たま乱太郎 3 アニメ

時の河については一旦置いておくとして
史上初の忍たま彗星が観測されています。
土井先生大人気。

作品名 表記数 ジャンル
SAMURAI SPIRITS 3 ゲーム
龍虎の拳シリーズ 1 ゲーム

格ゲーブームと言えばSNK!
夏の『餓狼伝説』に引き続き、『龍虎』『サムスピ』が登場しています。
このあと、KOFへの流れも楽しみですね。

作品名 表記数 ジャンル
富士見二丁目交響楽団 2 小説
逆宇宙ハンターズ 1 小説
浅見光彦シリーズ 1 小説
風の大陸 1 小説

『フジミ』が初登場。
↓を見ると、文庫化されたのは1994年とのことなので雑誌連載からでしょうか。
富士見二丁目交響楽団 - Wikipedia

作品名 表記数 ジャンル
五星戦隊ダイレンジャー 1 特撮
特捜ロボ ジャンパーソン 1 特撮
振り返れば奴がいる 13 ドラマ
水戸黄門 1 ドラマ
KinKi Kids 1 アイドル
Wコウジ 3 お笑い
130R 1 お笑い
access 3 音楽
LUNA SEA 3 音楽
BY-SEXUAL 1 音楽
ZI:KILL 1 音楽
レピッシュ 1 音楽

織田裕二無双第一弾が始まっています。
『振奴』こと『振り返れば奴がいる』が初登場で2桁表記。
ドラマジャンルはサークル数が多くないので、いきなりトップ作品に躍り出ています。

水戸黄門は意外とこの時期に初登場。
サークル自体は初期からありますが、カップリング表記が書かれるのは初。

音楽ジャンルは大物が登場してますね。

93-5:カップリング表記ランキング

名寄せしていない純粋な「カップリング表記」のランキングです。
書き方も含めて、どのカップリング表記が流行っているか見てみます。

C44(1993年夏)

順位 C44 表記数 構成比 作品
1 征当 94 3.1% サムライトルーパー
2 グー×ハー 67 2.2% サイバーフォーミュラ
3 ブー×修 55 1.8% サイバーフォーミュラ
4 A^2 55 1.8% 光GENJI
5 伸×遼 40 1.3% サムライトルーパー
6 蔵×飛 39 1.3% 幽遊白書
7 当征 37 1.2% サムライトルーパー
8 グーハー 37 1.2% サイバーフォーミュラ
9 健小次 37 1.2% キャプテン翼
10 31 1.0% 光GENJI

「征当」強い!
92年冬に続いての連覇です。
受攻逆転した「当征」も7位に入っていますね。

2位・3位はサイバーフォーミュラを代表する
2カップル(グー×ハー・ブー×修)が入ってきています。

「A^2」は「Aの2乗」の意味です。

C45(1993年冬)

順位 C45 表記数 構成比 作品
1 蔵×飛 66 2.0% 幽遊白書
2 征当 64 1.9% サムライトルーパー
3 直×高 57 1.7% 炎の蜃気楼
4 A^2 45 1.4% 光GENJI
5 ブー×修 41 1.2% サイバーフォーミュラ
6 グー×ハー 35 1.1% サイバーフォーミュラ
7 グーハー 32 1.0% サイバーフォーミュラ
8 征×当 30 0.9% サムライトルーパー
9 健小次 29 0.9% キャプテン翼
10 伸×遼 28 0.8% サムライトルーパー

冬になって順位が大変動!
「蔵×飛」が僅差でトップに躍り出ています。

そして3位にはランク外から炎の蜃気楼「直×高」がランクイン。
『炎の蜃気楼』は、カップリング表記の絶対数では6位に留まっていますが
その表記の1/3以上が「直×高」という一点集中型の作品になっています。
今で言えば『タイバニ』に近い形ですね。(タイバニは「兎虎」表記が3割)

そしてこの激動のランキングの中でも、しっかり9位をキープしている
「健小次」すごいですね。崩れません。

93-6:1993年まとめ

・×が半数近くまで普及
・リバ、女体化など新しい記法の模索
・『幽白』『スラダン』『ミラージュ』『セーラームーン』と新興勢力の躍進
・新興勢力が現れてもやっぱり『トルーパー』
・幽白と音楽系を中心にサークルカットが黒い

1993年はカップリング表記(記法)にしても作品にしても
80年代の影響力を脱して90年代独自の文化が台頭していく
機運が高まっている年でした。

それではまた次回、1994年版で!

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