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【コミケカタログで90年代のカップリングを調べてみた】第一回:80年代を見てみよう!

カップリング表記 カップリング表記-1990年代

コミケカタログ研究家のタルトです。
今回はコミケカタログを調べていく中で、サークルカットに書いてある『カップリング表記』
気になったので調べてみました。

例えば「リヴァイ×エレン」みたいな掛け算を使ったカップリング表記は、
もうだいぶ一般的(同人界隈では)になっていると思います。
ですが、「この記号っていつから使われてたの?」みたいな情報は、調べても意外と出てきません。

周りの人に聞いてみても、「物心ついた時にはあった」「息をするように自然に使ってた」
という感じです。
なので、だいぶ昔からあるんだなーとは予想できますが、
ネットが普及する前の1980〜90年代に関してはネット上にほとんど情報がありません。

幸いコミケカタログは1982年から発行されていて、しかも幅広いジャンルの作品を
カバーしていてイベント規模も国内最大です。
今回はそのコミケカタログのサークルカットからカップリング表記を抜き出して
「いつ」「どんなカップリング表記が」「どの作品で」「いくつ」使われているか
を明らかにしていきたいと思います。

あくまでコミケカタログの中だけの話になりますが、
当時のカップリングシーンの大枠は垣間見えるのではないかなと思います。
(キャプテン翼やサムライトルーパーがいかに猛威を振るっていたかとか)

1990年代をレポートする予定です

とりあえず最初に発行された1982年夏(C21)のコミケカタログから調べて始めて
今は1990年代前半を調査しているところです。
調べ終わった1980年代に関しては、論文を書いて学会の方に提出しましたので
採用されればどこかで見れるようになる予定です。

今回は1990年代の調査と並行して、気づいたことなどをカジュアルに
こちらに載せていこうと思います。
なにしろ1990年代だけでも39万サークルのサークルカットを見ていくので
その時々で残していかないと忘れてしまいそうなので。。。
こちらは学術論文ではないので、気楽に読んで頂ければと思います。

カップリング表記とは?

を語り始めると長くなるので、細かい定義はひとまず置いておいて、
今回は「イラストがなくても文字と記号だけで分かる」という基準で集計しています。
※論文とは観点を変えています※

例えば、『進撃の巨人』のリヴァイ兵長のイラストに「受」とだけ書いてあっても
今回はカウントしません。(イラストがないと誰だか分からないので)

あと、性別は意識していません。
BLもノーマルも百合も全て集計しています。

あとは実際の表記を見ていく中でおいおい説明したいと思います。
私も基本的な「×」とか「攻」とか「受」は知っていましたが
調べてみると軽く20種類以上の表記がありました。
思った以上に多彩な表現がされています。

1980年代を見てみよう!

1990年代のレポです!と言っておきながら今回は80年代です。
90年代を見ていく上で、80年代の情報と比較しながら見ると
その変化が楽しいんじゃないかなと思ったので。

細かいところは論文(が載ったら)参照ということで、
今回は要点をざっくりザクザクといきます。

目次

1−1:カップリング表記数の推移
1−2:表記別ランキング
1−3:作品別ランキング
1−4:どの作品でどの表記?(クロス集計)
1−5:小次健vs健小次!カップリングランキング

1−6:【余談】カップリング表記以外の専門用語
1−7:1980年代まとめ

集計のレイヤー(階層)ごとに分かれています。
数字ばっかりの記事になっていますので
興味のあるところだけ、ナナメ読んで頂ければと思います。
時間のない方は最後のまとめを。

1−1:カップリング表記数の推移

カップリング表記がいくつ書いてあるかを単純に合計したグラフです。
1980年代前半は少ないですが、後半の伸びがスゴイです。

ポイント

・1984年以降増加傾向にある
・特にC34(1988年夏)に急増(3倍以上)
・1989年には1000を超えるカップリング表記が!

補足:カップリング表記サークル数の推移

「カップリング表記数が増えてるのは、単にコミケの規模が大きくなって
参加サークル数が増えたからじゃないの?」
という疑問を持ったので、参加サークルのうち何%のサークルが
カップリング表記を書いているかを調べました。(青い折れ線グラフ)

※表記サークル率=カップリング表記サークル数/全サークル数[%]

表記サークル数とともに、表記サークル率も右肩上がりです。
「サークルカットにカップリング表記を書く」という文化が次第に広がっていく様子が分かります。
2013年夏コミの表記サークル率は4割弱くらいなので、これでもまだまだ伸びる余地がありますね。

ポイント

・参加サークルが増えただけではなく、カップリング表記を書くサークルの割合も増えている
・当初は1%だった表記サークル率が1989年には約8%(12サークルに1つ)に

1−2:表記別ランキング

順位 表記 表記数 構成比 用例 備考
1 813 23.4% 健♡小次 白抜きの♡も合算
2 669 19.3% 健・小次 中点
3 498 14.3% D&G  
4 連結 371 10.7% 健小次  
5 360 10.4% 小次受  
6 296 8.5% 一輝と氷河  
7 × 198 5.7% 一輝×氷河  
8 固有 79 2.3% 双璧 各作品固有の表記
9 49 1.4% 健攻  
10 35 1.0% 小次.健 ピリオド

1980年代はハートマークがトップ!
現在でも使われている表記ですが、全体の1%程度です。
たしかに直感的にラブラブなイメージが分かりやすい表記ですね。

「×」の順位が低いですが、初登場がC33(1987年冬)なので
まだ広がり始めたばかりという印象です。
「受」はC28(1985年夏)「攻」はその次のC29(1985年冬)からの登場です。

その他、分かりにくい表記については↓で解説します。

「連結」表記

名前を繋げた表記のことです。
『進撃の巨人』で言えば「リヴァエレ」(リヴァイ×エレンの意)、『黒子のバスケ』なら「黄黒」など。
これも今では一般的に使われている表記ですね。
特にこの表記の名前が見当たらなかったので今回、「連結」と名付けました。
C84(2013年夏コミ)で、最も多く使われていたのがこの連結表記です。

サークルカットでの初出は、最初のコミケカタログC21(1982年夏)です。
『リングにかけろ』サークルで、「スコヘル」という表記があります。
(ドイツチームのスコルピオン×ヘルガ)
「名前を省略して繋げる」というフォーマットがこの時代から出来ていたのは驚きです。
いま一番普及しているのが、もう30年以上の歴史を持つ由緒ある表記というのも面白いですね。

「固有」表記

各作品固有の表記のことです。これも特に名前がなかったので名付けてみました。
『黒子のバスケ』なら「光サンド」や「チャリアカー」
『TIGER&BUNNY』なら「バディ」など、直接名前を書かなくても
構成キャラクターが分かる表記です。
最近の作品なら、pixivのカップリングタグ一覧を見ればなんとなく分かるかと思います。

1980年代だと『銀河英雄伝説』の「双璧」が最多です。
銀河帝国のミッターマイヤーとロイエンタールの2人を表しています。

銀英伝は好きな作品なので大丈夫なのですが、サークルカットから固有表記を抜き出すには
ある程度の作品知識が必要なので、今回の調査で一番苦戦したところです。

ポイント

・1980年代はハートマークが最多
・「×」はまだまだ普及待ち
・「攻」「受」もこの頃から使われてる

1−3:作品別ランキング

1980年代の前半は表記数自体が少なくてマギレが多いので
最後の2年間だけ表にしてみました。

順位 C34
'88夏
表記数 構成比 C35
'89春
表記数 構成比 C36
'89夏
表記数 構成比 C37
'89冬
表記数 構成比
1 C翼 301 67.6% C翼 322 57.6% C翼 360 48.6% C翼 351 34.4%
2 星矢 81 18.2% 星矢 156 27.9% 星矢 191 25.8% トルーパー 318 31.2%
3 銀英伝 10 2.2% 銀英伝 15 2.7% トルーパー 108 14.6% 星矢 191 18.7%
4 エロイカ 5 1.1% トルーパー 9 1.6% 銀英伝 15 2.0% 光GENJI 37 3.6%
5 必殺シリーズ 5 1.1% プロ野球 7 1.3% 光GENJI 11 1.5% シュラト 35 3.4%
6 太陽にほえろ! 4 0.9% 風魔の小次郎 7 1.3% 太陽にほえろ! 6 0.8% 銀英伝 19 1.9%
7 風魔の小次郎 4 0.9% 必殺シリーズ 7 1.3% 必殺シリーズ 4 0.5% ミスター味っ子 9 0.9%
8 プロ野球 4 0.9% リングにかけろ 5 0.9% 風魔の小次郎 4 0.5% 風魔の小次郎 6 0.6%
9 ファントム無頼 3 0.7% 太陽にほえろ! 3 0.5% ミスター味っ子 4 0.5% プロ野球 6 0.6%
10 リングにかけろ 3 0.7% 新撰組 3 0.5% オフサイド 3 0.4% 必殺シリーズ 5 0.5%

※トルーパー:鎧伝サムライトルーパー
※シュラト:天空戦記シュラト
※C翼:キャプテン翼
※エロイカ:エロイカより愛をこめて
※銀英伝:銀河英雄伝説
※星矢:聖闘士星矢

『キャプテン翼』の圧勝!
同人の一時代を築いたとはよく聞きますが、これで実感しました。
圧倒的ですね〜。

私もジャンプを買っていたので、もちろん原作もアニメも見てましたが
世の中ではこんなことになっていたとは露知らずでした。
私達がプールでスカイラブハリケーンを練習していた頃に
晴海とか幕張ではボーイズラブハリケーンが巻き起こってたわけですね。

そして、同じジャンプ作品の『聖闘士星矢』も強いです。
『キャプテン翼』の勢いに押されつつも、全体の4分の1を占めているのは流石。
いわゆる「鎧モノ」の原点として、以降の『鎧伝サムライトルーパー』『天空戦記シュラト』に
繋がっていくグレイトフルな作品です。
しかもC34、35では車田正美先生の作品がトップテンに3つも入っていますね。

C翼・星矢の2強体勢だったカップリング界に彗星のように現れたのが『サムライトルーパー』です。
1988年4月開始のアニメなので、夏コミの申し込みには間に合っていないかんじですが
そこからは怒涛の大攻勢。
80年代最後のC37では、『聖闘士星矢』を抜いて2位に踊り出ています。
1990年代ではこの三強を巡る戦いも楽しみなところですね。

実は三次元も強い

カップリング表記というとマンガ・アニメ作品を想像していましたが
予想以上に三次元ジャンルも強いです。
ドラマからは『太陽にほえろ!』『必殺シリーズ』の「金パロ」ジャンルが安定した人気。
(金パロ:当時、金曜日の夜に放送されていた両作品のパロディの意)

スポーツではプロ野球。アイドルでは『光GENJI』が強いですね。

1−4:どの作品でどの表記?(クロス集計)

どの表記を多く使ってるか、作品によって傾向の違いがあるのでしょうか?
上位3作品に絞って表にしてみました。

作品 連結 × 固有
キャプテン翼 335 373 158 271 289 69 13 30 44 22
聖闘士星矢 222 125 94 11 34 60 81 3 1 5
鎧伝サムライトルーパー 167 73 22 37 8 24 92   2 2

数字ばっかりで分かりにくいと思いますが、作品軸で見ていくと
傾向がなんとなく分かってきます。
『キャプテン翼』の頑なに「×」を使わない姿勢は気になりますね。

ポイントを↓にまとめてみました。

ポイント

・ハートはみんな使ってる
・『キャプテン翼』は「×」をほとんど使わない
・『聖闘士星矢』は「連結」をほとんど使わない
・『サムライトルーパー』は「受」をほとんど使わない

1−5:小次健vs健小次!カップリングランキング

ここまでは、作品別や表記別などにくくったランキングを書いてきましたが
ここでは、実際のカップリング表記をそのまま集計してみました。

それでは、1980年代の全作品統一ランキングを。

順位 表記 表記数 作品
1 小次受 118 キャプテン翼
2 健受 98 キャプテン翼
3 健・小次 96 キャプテン翼
4 健小次 78 キャプテン翼
5 小次・健 69 キャプテン翼
6 源岬 59 キャプテン翼
7 健♡小次 50 キャプテン翼
8 松・小次 44 キャプテン翼
9 小次健 37 キャプテン翼
10 健攻 32 キャプテン翼

普通にキャプテン翼ランキングになりました!

そして、1980年代のカップリング表記王者は「小次受」。
「健受」がそれに続き、3位と4位は「健・小次」「健小次」と
表記は異なりますが、若島津建が先に書かれ、後に日向小次郎が書かれる形になっています。

キャプテン翼といえば、逆カップリング問題のはしりとも言える「健小次」「小次健」。
サークルカットに書かれたカップリング表記を見る限りでは
「健小次」(健攻・小次受)が優勢です!

11位以降

キャプテン翼しかないのもあんまりなので、11位〜30位のランキングを。

順位 表記 表記数 作品
11 D&G 29 太陽にほえろ!
12 健❤小次 27 キャプテン翼
12 松小次 27 キャプテン翼
14 小次❤健 25 キャプテン翼
14 源♡岬 25 キャプテン翼
14 双璧 25 銀河英雄伝説
14 源❤小次 25 キャプテン翼
18 源健 23 キャプテン翼
19 征当 21 鎧伝サムライトルーパー
20 源♡小次 20 キャプテン翼
20 一輝♡氷河 20 聖闘士星矢
22 源・岬 19 キャプテン翼
22 源・シュナ 19 キャプテン翼
24 一輝×氷河 18 聖闘士星矢
24 小次♡健 18 キャプテン翼
26 源・小次 17 キャプテン翼
26 源・健 17 キャプテン翼
28 紫龍受 15 聖闘士星矢
28 氷河・瞬 15 聖闘士星矢
28 征×当 15 鎧伝サムライトルーパー

『太陽にほえろ!』きました!
「D&G」は、神田正輝さんが演じる『ドック』と三田村邦彦さん演じる『ジプシー』のカップリングです。
登場人物がかなり多い作品だと思いますが、アルファベットだけで通じるというのもスゴイですね。

『キャプテン翼』では、SGGKこと若林源三先生が相手を変えながら何度も登場していますね。
「岬くん」「日向小次郎」「若島津建」「シュナイダー」と大人気です。
一方で、主人公の姿が見えないのが気になるところですが。
(このマンガは『キャプテン翼』というタイトルだったはず・・・)

そして14位に銀英伝!
双璧いいですよね。
ランキングには出ていませんが、もちろんラインハルトとキルヒアイスのカップリングもあります。
同盟側ではポプラン・コーネフの「2大エース」や、シェーンコップの本を見かけました。

トルーパーはまだ出たてということもあって数は少ないですが
やはり「征当」「征×当」がランクインしています。
「伊達征士×羽柴当麻」のカップリングですが、やはり名前が省略されて表記されますね。

聖闘士星矢は、青銅聖闘士をベースにするか黄金聖闘士をベースにするかで
大きく分かれている印象でしたが、1980年代はブロンズが強いですね。
そしてキャプテン翼に引き続き、「このマンガは『聖闘士星矢』という名前だったはず」現象が起きています。

『鎧伝サムライトルーパー』は、その点優しさのあるタイトルだなと思いました。

1−6:【余談】カップリング表記以外の専門用語

スーパー余談です。
カップリング表記以外にどんな専門用語が使われていたかを挙げておきます。
サークルカットしか見ていないので、ご了承ください。(マンレポはまた違うかも)

・「やおい」:最初のコミケカタログから使用されています
・「BL」:ありませんでした
・「腐女子」:ありませんでした
・「ビョーキ」:意味がよく分かりませんでしたが「ビョーキな人」とか「ビョーキ本」とか使われていました
・「擬人化」:『マシンロボ ぶっちぎりバトルハッカーズ』という作品でありました。(ロボット擬人化)
・「攻様」「受様」:いまと同じ意味か分かりませんが、C34(1988年夏)に使われていました
・「総受」:C36(1989年夏)に『アイザック総受本』と書かれていました。
      聖闘士星矢のクラーケンのアイザックです。まさかの海闘士。氷河の兄弟子ですね。
・「リバーシブル」:ありませんでした。が、「健小次&小次健の両刀」という表現がありました。

80年代から「総受」があったとは。これも歴史が長いですねー。

1−7:1980年代まとめ

たくさん書いてきましたが、ざっくり80年代のカップリング事情をまとめると↓

・1980年代後半からカップリング表記数は増え続けている
・一番使われているのはハートマーク
・「×」や「受」も登場している
・キャプテン翼を頂点とした聖闘士星矢・トルーパーの三強体勢
・「小次健」より「健小次」が多い
・三次元も頑張ってるよ

というかんじです!

そして90年代へ

今回は前座として1980年代を見てきましたが
次回から1990年代を1年ずつ見ていこうと思います。

まだ調査中なのであくまで予想ですが、
1990年代はカップリング表記的に、激動の時代だと思います。

カップリング表記学上の「初代御三家」と言われる(いま初めて言いました)
『キャプテン翼』『聖闘士星矢』『サムライトルーパー』に対し
『スラムダンク』『幽遊白書』『ガンダムW』『エヴァンゲリオン』などの新興勢力が加わり、
世はまさにカップリング戦国時代!
となってるんじゃないかなと思います。

少しずつ普及し始めるパソコンの影響も見てみたいところですね。
楽しみです。

ではまた次回!

COMIC ZINさんにカップリング表記本を委託しています

1980年代~1990年代のカップリング表記事情を同人誌にまとめました。
http://shop.comiczin.jp/products/detail.php?product_id=21158 http://shop.comiczin.jp/products/detail.php?product_id=22778

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