【コミケカタログで90年代のカップリングを調べてみた】最終回:1999年は恐怖の大王を封神台ヘ!

コミケカタログのサークルカットからカップリング表記を抜き出してカップリング表記の歴史を見ていこう的な記事、いよいよ最後の年1999年です。

前年の作品別ランキングでは、コミケ9連覇の絶対王者『SLAM DUNK』を新星『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』が豪快にブチ抜く大波乱がありましたが、この年はさらに世紀末に向けてyouはshockな展開が待ち受けていました。

1999年のコミケ

夏(C56)と冬(C57)の2回開催されました。

↓当時のコミケカタログ
 

C56の表紙は平野耕太さんですね。

 

この年からコミケカタログのROM版が発行されました。
DVDはまだ普及してないので、CD-ROMです。
うちにあるのはまだ読めます。

回数 季節 会場 日数 サークル 参加人数
C56 1999 東京ビッグサイト 3 35,000 400,000
C57 東京ビッグサイト 3 25,000 320,000

これまで冬コミは2日開催でしたが、この年は初の夏冬3日開催でした。
ただ、他のイベントとの被りで、冬は西館が使えなくなってます。
なのでサークル数としては2日開催とほぼ変わらない数となっています。

【目次】

1999年のカップリング表記

99-1:カップリング表記数

サークルカットに書かれた「カップリング表記の数」です。
いつも通り目視で数えています。

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冬コミは参加数が約3分の2になっていることを考えると、綺麗な右肩上がりになっています。
バブルとまではいきませんが、高度表記成長時代と言えるでしょう。

もちろんその背景には会場の変更など「参加サークル数全体の増加」もありますので、次のコーナーで比率も合わせて見ていきます。

99-2:カップリング表記サークル数

棒グラフはカップリング表記を書いている「サークルの数」です。
折れ線グラフは「表記を書いてるサークル数/全サークル数」の値「表記サークル率」です。表記サークル率は概ね、「カップリング表記の普及率」と考えていいでしょう。

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表記サークル率を見ると、この5年間で20%→28%と大きく増加していることが分かります。実数ベースでもC56では約1万サークルがサークルカットにカップリング表記を書いているわけで、カップリング表記はかなり市民権を得てると思っていいでしょう。

99-3:記法別ランキング

カップリング表記の記法(書き方)別ランキングです。
記法の分類基準については↓の記事をご参照ください。
カップリング表記の基本 - あまあまくろにくる

順位 1999年夏 表記数 構成比 1999年冬 表記数 構成比
1 × 8,892 61.3% × 6,203 59.4%
2 2,071 14.3% 連結 1,493 14.3%
3 連結 1,742 12.0% 1,432 13.7%
4 911 6.3% 703 6.7%
5 303 2.1% 230 2.2%
6 167 1.2% 固有 117 1.1%
7 固有 162 1.1% 99 0.9%
8 47 0.3% 37 0.4%
9 43 0.3% 26 0.2%
10 28 0.2% 21 0.2%

「1990年代は×の時代」を象徴するかのように90年代最後の年も圧倒的に「×表記」が使われています。

その一方で注目したいのは、冬コミで連結表記(現在最も使われている記号を使わず名前を繋げる表記)が2位に来ていることです。まだまだ×表記とは大きく差が開いていますが、歴史的にはこのわずか3年後に下剋上が起こり、連結表記が×表記を抜いてトップに躍り出ます。この時点では革命前の準備段階といったところでしょうか。

99-4:作品別ランキング

順位 1999年夏 表記数 構成比 1999年冬 表記数 構成比
1 封神演義 622 4.3% 封神演義 526 5.0%
2 ガンダムW 602 4.2% アンジェリーク 343 3.3%
3 SLAM DUNK 587 4.0% V6 322 3.1%
4 V6 550 3.8% KOF 307 2.9%
5 アンジェリーク 526 3.6% 幻想水滸伝2 295 2.8%
6 SMAP 497 3.4% SMAP 290 2.8%
7 レツゴ 466 3.2% SLAM DUNK 271 2.6%
8 KOF 413 2.8% ガンダムW 269 2.6%
9 るろうに剣心 325 2.2% 名探偵コナン 256 2.5%
10 KinKi Kids 314 2.2% ONE PIECE 235 2.3%

※レツゴ:爆走兄弟レッツ&ゴー!!
※KOF:ザ・キング・オブ・ファイターズ

90年代最後の年を制したのは前回5位から急成長『封神演義』。夢の国を探す君の名をサークルカットに刻んできました。主に誰と誰の名前が刻まれてるのかは次のコーナーで見るとして、夏コミの申込みはアニメ放送(同年7月)前なのに一気に増えてきています。

それと『SLAM DUNK』と時期が被ったためにずっと2位だった『ガンダムW』はここでも僅差の2位と涙を飲んでいます。カップリング表記の歴史としても同人の歴史としてもかなり重要なポジションにある作品ですが、一度もトップを取れていないのは意外です。

突然の失速『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』

『封神演義』が大躍進した一方で1998年冬の覇者『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』はこの年大きく失速。あくまで推測ですが、カップリング表記の内容を見ても、1998年から始まった第三期MAX編でキャラクターを一新したことによる影響が大きそうです。この年は残念な結果ではありますが、それでもこの激戦の中、一開催でもトップを取ったのはすごいです。

見逃せない止まらない三次元アイドル

ランキングを大きなジャンルの括りで見てみると、
夏コミ:漫画×4/アイドル×3/ゲーム×2/アニメ×1
冬コミ:漫画×4/アイドル×2/ゲーム×3/アニメ×1
と、三次元アイドルの存在感が大きいのがこの年の特徴です。

デリケートなジャンルなので極力触れないようにしてきましたが、ここまで大きくなると言及しないわけにはいきません。しかも『V6』は冬コミで3位。あまり大きく扱われない現在からは想像できない状況ですね。

参考までに2018年冬コミのトップ10は
漫画×3/ゲーム×3/アニメ×3/一次創作×1
と、三次元アイドルの姿は全く見えません。

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19年後は3位『名探偵コナン』

先ほど言及した2018年冬コミのランキングと、1999年冬コミのランキングで唯一共通してる作品、それが『名探偵コナン』です。しかもその間ずっとランキングにいたわけではなく、20年近く経っての返り咲き。これは同人史上初めてのケースだと思います。まさにグレイテスト・ショーマン。ただ内訳はかなり違っていて、1999年は「平×新」、2018年は「赤安」が一番人気です。それと、この当時まだ安室さんはいませんので、RX-7受けの本はありません。

99-5:カップリング表記ランキング

ここは「カップリング表記」のランキングです。
「カップリング」のランキングではなく、「どんな表記を書いているか」に注目です。

C56(1999年夏)

順位 表記 表記数 構成比 作品
1 1×2 123 0.8% ガンダムW
2 京×庵 93 0.6% KOF
3 庵×京 91 0.6% KOF
4 楊×太 87 0.6% 封神演義
5 木×中 71 0.5% SMAP
6 2×1 67 0.5% ガンダムW
6 火村×アリス 67 0.5% 作家アリス
8 光×剛 66 0.5% KinKi Kids
9 青×室 62 0.4% 踊る大捜査線
10 征当 56 0.4% サムライトルーパー

なんと「1×2」の数字表記が最多。知らない人から見たら完全に暗号です。6位に「2×1」があったり、2位と3位が左右逆だったりと、左右の解釈が大きく分かれているのが興味深いです。配置上も忖度されていて、逆カプは離れて配置されていました。

C57(1999年冬)

順位 表記 表記数 構成比 作品
1 庵×京 68 0.7% KOF
2 京×庵 61 0.6% KOF
3 楊×太 58 0.6% 封神演義
4 1×2 56 0.6% ガンダムW
5 青×室 50 0.5% 踊る大捜査線
6 木×中 45 0.4% SMAP
7 W×V 36 0.3% トライガン
8 涼×啓 33 0.3% 頭文字D
8 光×剛 33 0.3% KinKi Kids
10 征当 30 0.3% サムライトルーパー

夏とは一転、『KOF』勢がワンツーフィニッシュ。全体的に数が減っているのは全体のサークル数が減っているためです。

ほぼ×表記の一色の中、唯一の連結表記「征当」が80年代の作品というのも面白いです。かなり先取りしています。

99-6:カップリングランキング

こちらは「カップリング」別のランキングです。

実在の人物(特に存命の方)のお名前については、念のため「姓名一文字ずつ」で記載しています。
例:跡部景吾 → [跡景]

C56(1999年夏)

順位 表記数 構成比 作品
1 流川楓 桜木花道 213 1.5% SLAM DUNK
2 ヒイロ デュオ 204 1.4% ガンダムW
3 [堂光] [堂剛] 203 1.4% KinKi Kids
4 [木拓] [中正] 161 1.1% SMAP
5 火村英生 有栖川有栖 153 1.1% 作家アリス
6 楊戩 太公望 137 0.9% 封神演義
7 八神庵 草薙京 121 0.8% KOF
8 草薙京 八神庵 116 0.8% KOF
9 デュオ ヒイロ 112 0.8% ガンダムW
10 青島俊作 室井慎次 107 0.7% 踊る大捜査線

夏のカップリングインターハイを制したのは『SLAM DUNK』の「流花」。作品別では首位を譲ったものの、まだまだ若いカップルには負けません。

それと正直なところ『作家アリス』の「火アリ」がここまで盛り上がっているのには驚きました。小説ジャンルで当時映像化もされていない作品で、ここまで人気になるのはかなりレアケースです。小説ジャンルについては↓の同人誌の方で特集してますのでよろしければこちらも。
COMIC ZIN 通信販売/商品詳細 カップリング表記データブック【極】

C57(1999年冬)

順位 表記数 構成比 作品
1 [堂光] [堂剛] 126 1.2% KinKi Kids
2 楊戩 太公望 105 1.0% 封神演義
3 青島俊作 室井慎次 102 1.0% 踊る大捜査線
4 流川楓 桜木花道 95 0.9% SLAM DUNK
5 八神庵 草薙京 90 0.9% KOF
6 [木拓] [中正] 86 0.8% SMAP
7 草薙京 八神庵 82 0.8% KOF
8 ウルフウッド ヴァッシュ 78 0.8% トライガン
9 ヒイロ デュオ 77 0.7% ガンダムW
10 火村英生 有栖川有栖 68 0.7% 作家アリス

冬コミは「きんきちほー」のふたりがトップ。他のグループと違って元々ニコイチなのも「選択と集中」面で強いです。気になるのは左右の比率がだいぶ偏ってることですが、このあたりは有識者に聞いてみたいところです。

それと6位にも同じ事務所の先輩ふたりが入っていて、当時のアイドル人気の強さを感じさせます。

それと『踊る』の「青室」が3位に浮上。よく見るとトップ3に二次元カップリングが1組しかありません。

99-7:1999年まとめ

・『封神演義』が夏冬連覇!
・×表記隆盛の裏に、連結表記の胎動
・三次元アイドル強い

完結までに平成が終わるギリギリまでかかってしまいましたが、なんとか90年代だけでも書ききれてよかったです。今回はライト版になってしまいましたが、作品別・表記別・カップリング別ともにまだまだ細かい点に言及したいところなので、それは改めてどこかで。

それと、今年の夏コミの新刊は『平成カップリング表記史(仮)』と題してカップリング表記の歴史を振り返る予定です。この連載で扱ってきた1990年代についても2000年代・2010年代へ繋がっていく流れも踏まえてまとめていきます。また、近々カップリング表記の意識調査的なアンケートを取ろうと思いますので、ご協力の方よろしくお願いいたします。

それではご読了ありがとうございました。

同人誌版

2000年以降や最新情報は『カップリング表記データブック』という
同人誌にまとまっていますので、よろしければこちらも。

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