読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

【コミケカタログで90年代のカップリングを調べてみた】第八回:ゲームジャンル蜂起の1996年

コミケカタログのサークルカットからカップリング表記を抜き出して
カップリングの歴史を見ていこう的な記事、第8回です。

激動の1995年を越え、新たな時代が幕を上げました。
「Yahoo! JAPAN」がサービスを開始し、街にはコギャルがあふれ
初代ポケモンが大ブーム、名探偵コナンのアニメもこの年に始まりました。

カップリング表記界でも特に作品ジャンル面で新しい流れが見られます。

1996年のコミケ

夏(C50)と冬(C51)の2回開催されました。

↓当時のコミケカタログ
 

開催場所と参加人数の推移(直近5年)

回数 季節 会場 日数 サークル 参加人数
C42 1992 東京国際見本市会場(晴海) 2 12,000 250,000
C43 東京国際見本市会場(晴海) 2 15,000 180,000
C44 1993 東京国際見本市会場(晴海) 2 15,000 250,000
C45 東京国際見本市会場(晴海) 2 16,000 200,000
C46 1994 東京国際見本市会場(晴海) 2 16,000 240,000
C47 東京国際見本市会場(晴海) 2 16,000 200,000
C48 1995 東京国際見本市会場(晴海) 3 22,000 250,000
C49 東京国際見本市会場(晴海) 2 16,000 220,000
C50 1996 東京ビッグサイト 2 18,000 350,000
C51 東京ビッグサイト 2 22,000 220,000

この年の東京ビッグサイトの完成により晴海会場が閉場。
1991年から10開催続いた晴海開催(3期目)が終了し、現在も続く
東京ビッグサイトでの開催が始まりました。
最初のC50は全館開催ではなく、東5・6では別のイベントがやっていたとのこと。
コミケ当日に別のイベント(コンサートと映画祭)とか、今からでは信じられません。

96-1:カップリング表記数の推移

f:id:Tarte41:20151010200110j:plain

カップリング表記数は大きく上昇。
C48とC51のサークル数は全く同じなので、それだけカップリング表記を書く文化が
広がっていることが分かります。

表記サークル数の推移

その増加傾向が明確に現れているのがこちらの
カップリング表記を書いているサークル数です。

f:id:Tarte41:20151010201006j:plain

冬コミ(C51)では、全サークルの中で25%以上のサークルが
カップリング表記をサークルカットに書いていました。
4サークルに1サークルはカップリング表記を書いていることになります。
順調に右肩上がりで成長。

96-2:記法別ランキング

カップリング表記の記法(書き方)別のランキングです。

順位 1996夏 表記数 構成比 1996冬 表記数 構成比
1 × 3,261 58.8% × 4,754 61.6%
2 815 14.7% 1036 13.4%
3 連結 754 13.6% 連結 937 12.1%
4 332 6.0% 426 5.5%
5 125 2.3% 173 2.2%
6 116 2.1% 170 2.2%
7 固有 81 1.5% 固有 124 1.6%
8 13 0.2% 22 0.3%
9 8 0.1% 15 0.2%
10 ×+ 5 0.1% ハーレム 8 0.1%

×表記全盛の時代です。
遂に6割を超えてきました。

96-3:作品別ランキング

このように大きく成長しているカップリング表記界の
背景となった作品はなんだったのか。
作品別のカップリング表記数ランキングです。

順位 1996夏 表記数 構成比 1996冬 表記数 構成比
1 SLAM DUNK 1,132 20.4% SLAM DUNK 1,057 13.7%
2 新機動戦記ガンダムW 745 13.4% 新機動戦記ガンダムW 876 11.3%
3 SMAP 398 7.2% SMAP 636 8.2%
4 サムライトルーパー 292 5.3% 勇者指令ダグオン 385 5.0%
5 幽遊白書 289 5.2% サムライトルーパー 359 4.7%
6 サイバーフォーミュラ 174 3.1% るろうに剣心 292 3.8%
7 るろうに剣心 174 3.1% 幽遊白書 272 3.5%
8 KOF 135 2.4% KOF 228 3.0%
9 キャプテン翼 112 2.0% サイバーフォーミュラ 212 2.8%
10 炎の蜃気楼 96 1.7% アンジェリーク 154 2.0%

※KOF:ザ・キング・オブ・ファイターズ

1位2位は前年から変化なし

まだまだ強い『SLAM DUNK』がなんと6開催連続の首位です。
前年に彗星のように現れた期待の新人『新機動戦記ガンダムW』は
『SLAM DUNK』の牙城を崩すには至りませんでした。
しかし、冬コミではその『SLAM DUNK』が大きく構成比を落としてきています。

アイドル初のトップ3入り

人気番組『SMAP×SMAP』が始まったこの年、遂に『SMAP』が3位にランクインしてきました。
これは伝説の先輩グループ『光GENJI』さえ達成できなかった偉業です。

いわゆるナマモノ、しかもジャニーズのカップリングがこれだけメジャーということで
おそらくジャンルの空気感が今とは異なる時代だったのだと思われます。

明暗の分かれた2つのサンライズ作品

前年の『新機動戦記ガンダムW』の成功を受けて始まった『機動新世紀ガンダムX』ですが
視聴率が振るわず、同人も盛り上がらずという悲しい状況に。

その一方で人気を博したのが、勇者シリーズの『勇者指令ダグオン』です。
2月スタートのアニメながら早くも夏コミでカップリング表記が登場し
続く冬コミでは4位に急上昇しています。

ゲームジャンルの台頭

これまでのカップリング表記界は「漫画」「アニメ」「アイドル」を中心に動いてきましたが
ここにきてゲームジャンルが存在感を増してきています。
特に格ゲーブームを背景にSNK作品の人気が高まっており、同人的には
『ザ・キング・オブ・ファイターズ(KOF)』の1995年版で「八神庵」が登場したことにより
大きく火がつきました。まさに「へへっ燃えたろ?」。

1996年の作品別カップリング表記数ランキングから
100位以内に入っている格闘ゲームを抜き出してみました↓

順位 1996年合計 表記数 構成比
9 ザ・キング・オブ・ファイターズ 363 2.7%
15 バーチャファイター 159 1.2%
20 SAMURAI SPIRITS 112 0.8%
31 ストリートファイター 73 0.5%
36 餓狼伝説 61 0.5%
42 闘神伝 48 0.4%
51 ラストブロンクス 35 0.3%
52 龍虎の拳 33 0.2%
62 ファイティングバイパーズ 25 0.2%
73 サイキックフォース 21 0.2%
83 鉄拳 15 0.1%

『KOF』の人気が頭一つ抜けていることが分かります。
格ゲーブームの立役者である『ストリートファイター』はカップリング的には苦戦。
男性向創作やコスプレでは、春麗やキャミィを中心にまだまだ人気だったようです。

ファイナルファンタジー(FF)をはじめとするRPG勢もFF6を中心に頑張っていますが
この時期はまだ上位には来ておらず、人気となるのは翌1997年のFF7を待つこととなります。

シミュレーションRPG界でも同じく、『ファイアーエムブレム紋章の謎』が健闘していますが
カップリング的にブレイクするのはこの年の『聖戦の系譜』発売後になります。

そしてこの時期最も注目なのは、世界初の乙女ゲーム『アンジェリーク』の躍進です。
1994年に発売したこのゲームですが、1996年に音声のついた『アンジェリークSpecial』が
セガサターン・プレイステーションで発売されたことにより大きな人気となりました。
カップリング傾向も特徴的で、男性同士のカップリングが基本だったこの時代に、
男女カップリング人気をもたらしたカップリング史上でも重要な作品となっています。
テストに出ます。

このように、まだまだ順位としては低いですが、ゲームジャンルが
じわじわと力を持ち始めているのが1996年の特徴です。

96-4:カップリング表記ランキング

名寄せしていない純粋な「カップリング表記」のランキングです。

C50(1996年夏)

順位 表記 表記数 構成比 作品
1 流×花 107 1.9% SLAMDUNK
2 デュオ×ヒイロ 102 1.8% 新機動戦記ガンダムW
3 ヒイロ×デュオ 57 1.0% 新機動戦記ガンダムW
4 木×中 54 1.0% SMAP
5 流花 46 0.8% SLAMDUNK
6 征当 45 0.8% 鎧伝サムライトルーパー
7 仙×越 38 0.7% SLAMDUNK
8 1×2 34 0.6% 新機動戦記ガンダムW
9 トロワ×ヒイロ 32 0.6% 新機動戦記ガンダムW
10 仙×花 32 0.6% SLAMDUNK

1位は「流×花」。
前回「デュオ×ヒイロ」に奪われた王座を即座に奪還しました。
その「デュオ×ヒイロ」と逆カプの「ヒイロ×デュオ」は、順位は1つ差なものの
表記数では大きく引き離されていることが分かります。

C51(1996年冬)

順位 表記 表記数 構成比 作品
1 流×花 103 1.3% SLAMDUNK
2 木×中 101 1.3% SMAP
3 1×2 82 1.1% 新機動戦記ガンダムW
4 2×1 72 0.9% 新機動戦記ガンダムW
5 デュオ×ヒイロ 68 0.9% 新機動戦記ガンダムW
6 征当 64 0.8% 鎧伝サムライトルーパー
7 ヒイロ×デュオ 63 0.8% 新機動戦記ガンダムW
8 庵×京 53 0.7% ザ・キング・オブ・ファイターズ
9 カヲル×シンジ 52 0.7% 新世紀エヴァンゲリオン
10 慎×中 49 0.6% SMAP

SMAPの「木×中」が大きく上昇。
そして表記的に注目なのは『新機動戦記ガンダムW』で数字の表記が
名前の表記を上回ってきたことです。
密かにカップリング表記の再編が進んでいます。

そして今期注目の『KOF』からは「庵×京」が登場。
加えて『新世紀エヴァンゲリオン』からは「カヲル×シンジ」と
1995年の注目作品から続々とランクインしています。

96-5:攻め受けマトリックス

今回大躍進のゲームジャンルから、格ゲー代表の
『ザ・キング・オブ・ファイターズ』をピックアップしました。

ザ・キング・オブ・ファイターズ

f:id:Tarte41:20151010232206j:plain

※攻受上位10キャラまで表示
※合計値は見えてないキャラの分も含んでいます
※攻キャラの「-」は「~受」などで攻キャラが指定されてないケース

京・庵・肉まんケンスウ受けで約9割と、人気キャラが固まっている様子が伺えます。

京と同じ主人公チームでは、紅丸が攻めサイドで人気です。
格闘ゲームならではの特徴として、同キャラ対戦が出来ることを背景に
同キャラカップリングが他ジャンルより多く見られます。

96-6:トピックス

【用語】男女カップリング


[コミケット50カタログ P.97より]

このサークルカットはとても示唆に富んでいる1枚です。
まず、この時代ですでに「カップリング」という単語が使われていること。
意外とサークルカットには書かれない単語なので、いつ頃から使われているかは
分かりませんが、この開催の他のサークルカットにも書かれているため
少なくとも1996年段階では普通に通じる言葉だったと推測されます。

また、あえて「男女カップリング」と書かれていることから、
当時は「カップリング」と言えば男性同士のカップリングを指すと
考えられているものと思われます。
それと、これまで調べたところでは「ノマカプ」という表現はまだ使用されていませんでした。
(その表現が適切かどうかの議論は一旦置いておきます)

メールアドレスとホームページアドレス


[コミケット50カタログ P.167より]

サークルカット初のメールアドレスとホームページアドレスです。
メールアドレスは現在も公開されているアドレスのようでしたが
念のため消してあります。
該当のホームページはこちら↓現在も活動されています。
www.st.rim.or.jp

1996年はちょうど1995年のWindows95発売、テレホーダイの開始などを背景に
インターネットの一般普及が始まっている頃です。
さらに翌1997年にはジオシティーズの日本語版サービスが開始され
サークルカットにも個人のメールアドレスやホームページアドレスが
多く書かれるようになっていきます。

サークル跨ぎのカップリング表記


[コミケット50カタログ P.217より]

『SLAM DUNK』の「はなる」(桜木花道×流川楓)サークルです。
現在は禁止されている連カットですが、この頃はまだ見かけますね。
今回のカップリング表記集計上では、1サークルでカウントしています。

ときメモブーム

作品別ランキングのコーナーでは世界初の乙女ゲーム『アンジェリーク』を
取り上げましたが、同時期に恋愛シミュレーションを大きく普及させた名作
『ときめきメモリアル』が発売されています。
1995年10月にはプレイステーション版が発売され、コミケでは
「ゲーム(その他)」ジャンルで人気になっています。

コミックマーケット51


[コミケット51カタログ P.408より]

この回しか出来ない技。
次回はC244でしょうか。

2015年のC88でも『エリア88』との公式コラボがありましたね。

コミックマーケット 88 カタログ

コミックマーケット 88 カタログ

【用語】萌え萌え


[コミケット51カタログ P.745より]

サークルカットでは初の「萌え」です。
『水色時代』の北野さんですね。
「萌え」という単語の起源は諸説ありますが、1996年段階で
サークルカットに登場していることは確認できます。

96-7:1996年まとめ

・会場が東京ビッグサイトに
・カップリング表記を書くサークルが25%超え
・6割が×表記

・『SLAM DUNK』が6連覇中
・格闘ゲーム、乙女ゲームを中心にゲームジャンルが台頭

なんといっても、「漫画」「アニメ」「アイドル」で構成されていたカップリング表記界に
新たな「ゲーム」という軸が加わったことが大きいです。
続く1997年にはビッグタイトル『FF7』や『アンジェリークSpecial2(サターン・PS版)』の
発売も控えているため、今後の動向にも注目していきたいです。

ではまた次回!

同人誌

これまで調べたカップリング表記情報は『カップリング表記データブック』という
同人誌にまとまっていますので、ご興味のある方はこちらも。

◆COMIC ZINさんに委託中です◆
http://shop.comiczin.jp/products/list.php?category_id=5603