【コミケカタログで90年代のカップリングを調べてみた】第七回:1995年に降り注ぐ流星
コミケカタログのサークルカットからカップリング表記を抜き出して
カップリングの歴史を見ていこう的な記事、久々の第七回目です。
世間的にも大きな事件の続いた1995年、漫画界では『ドラゴンボール』の連載終了、
アニメ界では4月に『新機動戦記ガンダムW』10月に『新世紀エヴァンゲリオン』が
スタートするなど、大きな変化のあった年でした。
バックナンバー
第一回:80年代を見てみよう!
第ニ回:1990年はサムライイヤー!
第三回:1991年は×の時代!
第四回:1992年は拡散の時代!
第五回:1993年に吹き荒れる維新の嵐!
第六回:1994年はジャンプ復古の大号令!
1995年のコミケ
夏(C48)と冬(C49)の2回開催されました。
↓当時のコミケカタログ
C48はコミケ史上初の3日開催となり、カタログは2冊に分冊されていました。
開催場所と参加人数の推移(直近5年)
回数 | 年 | 季節 | 会場 | 日数 | サークル | 参加人数 |
---|---|---|---|---|---|---|
C40 | 1991 | 夏 | 東京国際見本市会場(晴海) | 2 | 11,000 | 200,000 |
C41 | 冬 | 東京国際見本市会場(晴海) | 2 | 14,000 | 200,000 | |
C42 | 1992 | 夏 | 東京国際見本市会場(晴海) | 2 | 12,000 | 250,000 |
C43 | 冬 | 東京国際見本市会場(晴海) | 2 | 15,000 | 180,000 | |
C44 | 1993 | 夏 | 東京国際見本市会場(晴海) | 2 | 15,000 | 250,000 |
C45 | 冬 | 東京国際見本市会場(晴海) | 2 | 16,000 | 200,000 | |
C46 | 1994 | 夏 | 東京国際見本市会場(晴海) | 2 | 16,000 | 240,000 |
C47 | 冬 | 東京国際見本市会場(晴海) | 2 | 16,000 | 200,000 | |
C48 | 1995 | 夏 | 東京国際見本市会場(晴海) | 3 | 22,000 | 250,000 |
C49 | 冬 | 東京国際見本市会場(晴海) | 2 | 16,000 | 220,000 |
前述の通り、夏コミが3日間開催になり、いよいよ2万サークルを超えてきました。
95-1:カップリング表記数の推移
C48で表記数が1.5倍に!
3日開催の威力が発揮されています。
一方C49ではサークル参加数がC47と同数に戻っていますが
表記数は増加しています。
ということは、カップリング表記を書くサークルの割合が増えているのでは?
ということで次のグラフになります。
表記サークル数の推移
カップリング表記を書いているサークルの数です。
※表記サークル率=表記サークル数/全サークル数[%]
表記サークル率が20%を超えてきました。
単純にコミケ全体の5サークルに1サークルはカップリング表記を
書いていることになります。
カップリング表記の少ない「評論」「男性向け創作」なども含んでこの数字です。
95-2:記法別ランキング
カップリング表記の記法(書き方)別のランキングです。
順位 | C48 | 表記数 | 構成比 | C49 | 表記数 | 構成比 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | × | 3,335 | 55.2% | × | 2,661 | 57.8% |
2 | 連結 | 946 | 15.7% | ❤ | 644 | 14.0% |
3 | ❤ | 816 | 13.5% | 連結 | 612 | 13.3% |
4 | 受 | 383 | 6.3% | 受 | 301 | 6.5% |
5 | ・ | 193 | 3.2% | ・ | 123 | 2.7% |
6 | & | 168 | 2.8% | & | 120 | 2.6% |
7 | 固有 | 120 | 2.0% | 固有 | 87 | 1.9% |
8 | 攻 | 12 | 0.2% | 攻 | 11 | 0.2% |
9 | and | 9 | 0.1% | + | 6 | 0.1% |
10 | → | 9 | 0.1% | ハーレム | 5 | 0.1% |
そしていつも通りハート表記と連結表記が2番手争いを繰り広げています。
C49で連結表記が落ち込んでいるのは、新興勢力の『新機動戦記ガンダムW』では
連結表記がほとんど使われないことが影響しています。
今では信じられませんが、この頃のカップリングは
「流❤花」のようにハートを使って書くのもわりとメジャーです。
95-3:作品別ランキング
どんな作品が(カップリング表記的に)流行っているのか見ていきます。
順位 | C48 | 表記数 | 構成比 | C49 | 表記数 | 構成比 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | SLAMDUNK | 1,792 | 29.7% | SLAMDUNK | 973 | 21.1% |
2 | 幽遊白書 | 620 | 10.3% | 新機動戦記ガンダムW | 416 | 9.0% |
3 | サムライトルーパー | 469 | 7.8% | 幽遊白書 | 315 | 6.8% |
4 | サイバーフォーミュラ | 332 | 5.5% | サムライトルーパー | 298 | 6.5% |
5 | SMAP | 205 | 3.4% | SMAP | 243 | 5.3% |
6 | セーラームーン | 179 | 3.0% | サイバーフォーミュラ | 192 | 4.2% |
7 | るろうに剣心 | 179 | 3.0% | るろうに剣心 | 181 | 3.9% |
8 | キャプテン翼 | 174 | 2.9% | キャプテン翼 | 127 | 2.8% |
9 | 炎の蜃気楼 | 161 | 2.7% | セーラームーン | 108 | 2.3% |
10 | 光GENJI | 147 | 2.4% | 炎の蜃気楼 | 92 | 2.0% |
バスケットマン最強伝説
前年の1994年にトルーパーから政権を奪取した『SLAM DUNK』がそのまま王座に君臨。
3日開催になった夏コミでは約1,800表記と、桁違いの戦闘力を見せています。
降り注ぐ流星
そこに突如サンライズの鉄砲玉『新機動戦記ガンダムW』が
「お前を殺す」とばかりに突貫してきました。
もちろんこのセリフを言われた人は死なないので、
『SLAM DUNK』は首位をキープしています。
集英社vsサンライズ
この頃のカップリングはこの2社が圧倒的な存在感を見せています。
◆集英社軍(主に週刊少年ジャンプ)◆
・SLAMDUNK
・幽遊白書
・るろうに剣心
・キャプテン翼
・炎の蜃気楼(コバルト文庫)
◆サンライズ軍◆
・新機動戦記ガンダムW
・サムライトルーパー
・サイバーフォーミュラ
この堂々たる布陣。
しかし集英社側には不安要素が。
1994年12月に歴代最高部数を記録した週刊少年ジャンプですが
この年のドラゴンボール完結を契機に減少に転じています。
ジャンプ黄金期の崩壊が始まっています。
95-4:カップリング表記ランキング
名寄せしていない純粋な「カップリング表記」のランキングです。
書き方も含めて、どんなカップリング表記が流行っているか見てみます。
C48(1995年夏)
順位 | 表記 | 表記数 | 構成比 | 作品 |
---|---|---|---|---|
1 | 流×花 | 170 | 2.8% | SLAMDUNK |
2 | 征当 | 83 | 1.4% | 鎧伝サムライトルーパー |
3 | 仙×越 | 68 | 1.1% | SLAMDUNK |
4 | 花×流 | 54 | 0.9% | SLAMDUNK |
5 | 飛×蔵 | 52 | 0.9% | 幽遊白書 |
6 | 仙越 | 51 | 0.8% | SLAMDUNK |
7 | 蔵×飛 | 50 | 0.8% | 幽遊白書 |
8 | 仙×花 | 47 | 0.8% | SLAMDUNK |
9 | 直×高 | 45 | 0.7% | 炎の蜃気楼 |
仙×流 | 45 | 0.7% | SLAMDUNK |
3日開催の影響があるとはいえこの時期に「征当」が増えてるのもすごいです。
C49(1995年冬)
順位 | 表記 | 表記数 | 構成比 | 作品 |
---|---|---|---|---|
1 | デュオ×ヒイロ | 73 | 1.6% | 新機動戦記ガンダムW |
2 | 流×花 | 68 | 1.5% | SLAMDUNK |
3 | 征当 | 54 | 1.2% | 鎧伝サムライトルーパー |
4 | 木×中 | 46 | 1.0% | SMAP |
5 | 仙×越 | 36 | 0.8% | SLAMDUNK |
6 | 直×高 | 34 | 0.7% | 炎の蜃気楼 |
7 | ヒイロ×デュオ | 32 | 0.7% | 新機動戦記ガンダムW |
8 | A^2 | 31 | 0.7% | 光GENJI |
9 | 飛×蔵 | 29 | 0.6% | 幽遊白書 |
左之×剣 | 29 | 0.6% | るろうに剣心 |
「デュオ×ヒイロ」が「流×花」を交わしてトップに。
そしてSLAMDUNK独占状態から8作品の入り乱れる混戦ムードになってきました。
ガンダムWといえば「2×1」のような数字でのカップリング表記が有名ですが
この頃は一部のサークルでしか使われておらず、名前での表記がメジャーです。
二次元活況の中、「木×中」「A^2」(2乗)がランクインしているのにも注目です。
95-5:攻め受けマトリックス
今回はこの作品しかないでしょう。
※攻受上位10キャラまで表示
※合計値は見えてないキャラの分も含んでいます
※攻キャラの「-」は「~受」などで攻キャラが指定されてないケース
新機動戦記ガンダムW(1995年合計)
受け側は約4割がヒイロ受けという結果になっています。
続いてデュオ、カトル。
なんにせよ「デュオ×ヒイロ」が抜けてますね。
主人公5人組を外した所では、「トレーズ×ゼクス」が人気です。
95-6:トピックス
夏コミ時点で
ガンダムWが4月放映開始ということで夏コミのサークルカットには
間に合っていませんが、実態として夏コミ時点ですでに流行っていたようです。
「みつあみ君×自爆少年」ってカップリング表記も素晴らしいですね。
(デュオ×ヒイロ)
95-7:1995年まとめ
・初の3日開催でカップリング表記が急増
・いよいよカップリング表記を書くサークルが20%超え
・×表記の時代継続中
・『SLAM DUNK』最強伝説
・サンライズからの刺客『ガンダムW』登場
・宇宙(そら)から降ってきた三つ編みと自爆少年が人気に
どうしても集英社vsサンライズの頂上決戦に目がいってしまう1995年でしたが
この裏では、『KOF'95』で八神庵が登場、『アンジェリーク』の表記が初登場など
ゲームジャンルの胎動が始まっています。
空前のエヴァブームも絡んで1996年はどうなるのか、全く予断を許しません。
それではまた次回!