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【コミケカタログで90年代のカップリングを調べてみた】第九回:失楽園よりセフィクラが気になる1997年

カップリング表記 カップリング表記-1990年代

コミケカタログのサークルカットからカップリング表記を抜き出して
カップリングの歴史を見ていこう的な記事、第9回です。
前回から1年以上経っていますが、気のせいです。
その間もちゃんと調査はしてました。

1997年といえばもう20年前のことになるので
当時の様子を軽く思い起こしながら見ていきたいと思います。

1997年に盛り上がったもの

映画

・ 5月『失楽園』           →流行語大賞に
・ 7月『もののけ姫』         →「生きろ。」
・ 7月『エヴァ Air/まごころを、君に』→「気持ちわるい」
・12月『タイタニック』        →年末公開だったのでブームは翌年

もののけ姫 [Blu-ray]

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ドラマ

・ 1月『踊る大捜査線』   →後から人気に
・ 4月『ひとつ屋根の下2』 →ひだまりの詩
・ 7月『失楽園』      →映画に続いてドラマも

踊る大捜査線(1) [DVD]

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『踊る大捜査線』は後年、コミケの「TV・映画・芸能」ジャンルに
大きなインパクトを与えました。この年はまだそれほど。

音楽

・ 2月『CAN YOU CELEBRATE?(安室奈美恵)』→脅威のダブルミリオン
・ 7月『硝子の少年(KinKi Kids)』→デビューシングル

KinKi Single Selection

KinKi Single Selection

CDバブル真っ盛り。
セールストップテンは全てミリオンという恐ろしい時代です。
90年代前半から活動している『KinKi Kids』が満を持してのCDデビュー。

書籍

・『ビストロ・スマップ完全レシピ』
・『失楽園上・下』

ビストロスマップ完全レシピ

ビストロスマップ完全レシピ

『SMAP×SMAP』のもたらしたインパクトについては後述します。

漫画

・ 2月『最遊記』連載開始
・ 4月『ポケットモンスターSPECIAL』連載開始
・ 7月『ONE PIECE』連載開始
・11月『週刊少年マガジン』が『週刊少年ジャンプ』を発行部数で抜く

ONE PIECE  1 (ジャンプ・コミックス)

ONE PIECE 1 (ジャンプ・コミックス)

ジャンプ低迷の時代に『ONE PIECE』が連載を開始しています。
2000年前後に『封神演義』『幻想水滸伝』とともにコミケ中華ブームを担った
『最遊記』にも注目です。

アニメ

・ 1月『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz』(OVA)
・ 2月『勇者王ガオガイガー』
・ 4月『ポケットモンスター』→12月に「ポケモンショック」
・ 4月『少女革命ウテナ』
・ 4月『金田一少年の事件簿』

ポケットモンスター 1巻 [VHS]

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この年のアニメと言えば『ポケモン』が大きな話題となりました。
事件の影響か、この頃のDVDとかBlu-rayは出ていない模様。

ゲーム

・前年『ポケモン(赤緑青ピカ)』 →前年発売でこの年も大ブーム
・前年『たまごっち』       →社会現象に(第一次ブーム)

・ 1月『ファイナルファンタジーⅦ』
・ 6月『ファイナルファンタジータクティクス』
・ 7月『サガフロンティア』
・ 7月『みんなのGOLF』
・12月『テイルズオブデスティニー』
・12月プレステの出荷台数が日本国内1000万台突破

プレイステーションSCPH-7000本体 PS

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この年のプレステブームがコミケのゲームジャンルにも
大きな影響を及ぼすことになります。

1997年のコミケ

夏(C52)と冬(C53)の2回開催されました。

↓当時のコミケカタログ

C52のカタログは2冊に分冊されていました。
この回を最後に、以降コミケカタログの分冊は行われていません。

回数 季節 会場 日数 サークル 参加人数
C52 1997 東京ビッグサイト 3 33,000 400,000
C53 東京ビッグサイト 2 22,000 300,000

前年から東京ビッグサイトでの開催になり、拡大を続けるコミックマーケットですが
いよいよこの年の夏コミは3万サークルを超えてきました。
前開催から1万サークル以上増えるというコミックマーケットにとって
大きなチャレンジとなった回です。

このカップリング表記調査もこの辺りから心が折れそうになってきます。

1997年のカップリング表記

97-1:カップリング表記数

サークルカットに書かれたカップリング表記の数です。
いつも通り目視で数えています。

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夏コミで初の1開催1万表記を達成!
さすがサークル数1万増は伊達じゃありません。

一方の冬コミは2日開催なので前年冬と同じレベルまで戻っています。

97-2:カップリング表記サークル数

続いてカップリング表記を書いているサークルの数です。
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カップリング表記サークル数が大きく増加している一方で
カップリング表記を書いているサークルの割合は微減しています。

ただ1%未満のレベルの話なので、誤差の範囲と言えるかもしれません。
この年は概ね4サークルに1サークルはカップリング表記を書いていることになります。

97-3:記法別ランキング

カップリング表記の記法(書き方)別のランキングです。
記法の分類については↓の記事をご参照ください。
カップリング表記の基本 - あまあまくろにくる

順位 1997夏 表記数 構成比 1997冬 表記数 構成比
1 × 7,014 60.9% × 4,748 61.7%
2 1,505 13.1% 1,064 13.8%
3 連結 1,447 12.6% 連結 892 11.6%
4 730 6.3% 493 6.4%
5 247 2.1% 171 2.2%
6 243 2.1% 120 1.6%
7 固有 168 1.5% 固有 77 1.0%
8 49 0.4% 29 0.4%
9 17 0.1% 16 0.2%
10 14 0.1% 14 0.2%

×表記と❤表記の趨勢は決し、×全盛の時代が続いています。

97-4:作品別ランキング

順位 1997夏 表記数 構成比 1997冬 表記数 構成比
1 SLAM DUNK 1,242 10.8% SLAM DUNK 577 7.5%
2 新機動戦記ガンダムW 1,137 9.9% 新機動戦記ガンダムW 576 7.5%
3 SMAP 879 7.6% SMAP 418 5.4%
4 勇者指令ダグオン 561 4.9% FF7 417 5.4%
5 サムライトルーパー 437 3.8% KOF 404 5.3%
6 KOF 393 3.4% レッツ&ゴー!! 327 4.3%
7 るろうに剣心 387 3.4% アンジェリーク 264 3.4%
8 アンジェリーク 306 2.7% 勇者指令ダグオン 196 2.5%
9 幽遊白書 297 2.6% サムライトルーパー 193 2.5%
10 レッツ&ゴー!! 280 2.4% るろうに剣心 188 2.4%

※KOF:ザ・キング・オブ・ファイターズ
※FF7:ファイナルファンタジー7

『SLAM DUNK』脅威の8連覇!

1994年夏コミから実に4年間、トップジャンルに君臨しています。
連載もアニメも前年に完結している中、この存在感は流石です。

Slam dunk―完全版 (#1) (ジャンプ・コミックスデラックス)

Slam dunk―完全版 (#1) (ジャンプ・コミックスデラックス)

一番人気のカップリングは「流花(流川楓×桜木花道)」
スラダンジャンルの30%を占めています。
2位も逆カプの「はなる(桜木花道×流川楓)」なので
近年の『TIGER&BUNNY』ジャンルのようなバディ型のカップリング分布になっています。

流花は主に漢字ですが、花流は平仮名の「はなる」が多いのも特徴です。

一表記に肉薄『ガンダムW』


[DOLCE&GABBANA シンプルリブ地コットンタンクトップ]

この「お前を殺す服」で有名な『ガンダムW』が
冬コミで絶対王者『SLAM DUNK』にわずか一表記差まで迫る第2位にランクイン。

構成比で見ると、2016年冬コミのトップジャンル『刀剣乱舞』が
「10.0%」だったので、1997年の夏コミは『刀剣乱舞』クラスの
作品が2つもあったことになります。

炸裂!『SMAP×SMAP』ダイナマイト!

ダイナマイト

ダイナマイト

前年4月から始まった平均視聴率29.6%の月9ドラマ『ロングバケーション』と
冠番組『SMAP×SMAP』の大ヒットを背景に、『SMAP』が三次元最高記録となる
879表記を獲得して堂々3位。
二次元全盛の90年代に一石を投じる形となりました。

この時代は三次元のカップリング表記に隠語などはほとんど使われておらず
「木×中」「慎×中」「慎×剛」など、普通に名前の省略形で表記されていました。

上位陣の構成比

このように、トップ3は前年に引き続き『SLAM DUNK』『ガンダムW』『SMAP』がガッチリキープ。
しかも全体のサークル数増加に呼応して、カップリング表記数も増えています。

ですがその一方で、全体に対する構成比はかなり下がってきています。

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↑表記数は増加しているが 
↓構成比は低下
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このギャップの背景にあるのは、カップリング表記が
数多くの作品に広がっていってるということです↓

カップリング表記が書かれた作品数の推移

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これまで緩やかに増えてきた作品数が、
1996年冬・1997年夏と急激に増加しています。
しかも2日開催で大幅にサークル数が減った1997年冬コミでも微減です。

これまである程度限定された作品に書かれていた
カップリング表記がこの時期、広く普及していった様子が見て取れます。

プレステRPGの時代を切り開く『ファイナルファンタジー7』

前回の記事で「ゲームジャンルの台頭」について触れましたが
1996年は『KOF』を中心とした格闘ゲームの時代でした。

しかしここで流れは一変します。
伝説の三角関係RPG『ファイナルファンタジー7』の登場です。

ファイナルファンタジーVII 10thアニバーサリー アルティマニア 増補改訂版 (SE-MOOK)

ファイナルファンタジーVII 10thアニバーサリー アルティマニア 増補改訂版 (SE-MOOK)

三角関係に誰を当てはめるかはプレイヤー次第です↑

この作品の大ヒットによるPlayStationの普及が
『アンジェリーク』『遙かなる時空の中で』を中心とした乙女ゲームや
『幻想水滸伝』『東京魔人学園』『ペルソナ』などのRPGジャンルの
隆盛へと繋がっていくことになります。(特に根拠はないので、あくまで推測ですが)

一番人気カップリングは「セフィ×クラ(セフィロス×クラウド)」で
ジャンル全体の約4分の1。
後年人気となる「ザックラ(ザックス×クラウド)」は、まだ6%程度でした。

97-5:カップリング表記ランキング

「カップリング」のランキングではなく
「カップリング表記」のランキングです。

C52(1997年夏)

順位 表記 表記数 構成比 作品
1 1×2 142 1.2% 新機動戦記ガンダムW
2 木×中 131 1.1% SMAP
3 流×花 127 1.1% SLAM DUNK
4 2×1 117 1.0% 新機動戦記ガンダムW
5 庵×京 102 0.9% KOF
6 征当 86 0.7% サムライトルーパー
7 京×庵 85 0.7% KOF
8 流花 84 0.7% SLAM DUNK
9 デュオ×ヒイロ 77 0.7% 新機動戦記ガンダムW
10 慎×中 68 0.6% SMAP

夏のカップリング表記は「1×2」がトップでした!
この作品を知らない方にはさっぱり分からない感。

この時期は三次元よりよっぽど暗号化されてますね。

上位5表記が全て「×表記」なことからも、
×表記全盛の時代であることが分かります。

C52(1997年冬)

順位 表記 表記数 構成比 作品
1 庵×京 132 1.7% KOF
2 1×2 75 1.0% 新機動戦記ガンダムW
3 京×庵 68 0.9% KOF
4 セフィ×クラ 62 0.8% ファイナルファンタジー7
5 2×1 56 0.7% 新機動戦記ガンダムW
6 流×花 54 0.7% SLAM DUNK
7 木×中 52 0.7% SMAP
8 流花 42 0.5% SLAM DUNK
9 征当 39 0.5% サムライトルーパー
10 カヲル×シンジ 34 0.4% 新世紀エヴァンゲリオン

一方の冬は「そのまま死ね!」攻め「燃え太郎」受けこと「庵×京」がトップ。
4位に話題の「セフィ×クラ」も入ってきています。

意外なのはこの時期に「カヲル×シンジ」が上がってきていることでしょうか。

97-6:カップリングランキング

カップリングランキングは三次元的な実名を出さざるを得ないので
ここでは省略します。

同人誌『カップリング表記データブック』の方では特に規制せず
ありのままを掲載していますので、詳しくはそちらで。

97-7:トピックス

【カタログ初出】生もの

f:id:Tarte41:20170323220232j:plain
[コミケット52カタログside1 P.401より]

いわゆる実在の人物を題材にした二次創作を「ナマモノ」と言いますが
その単語がサークルカット上に登場したのはこの年が初。
通常カット上で使われない単語なのでここまで書かれなかったのだと
思いますが、歴史上の記録として残しておきます。

【カタログ初出】J禁

f:id:Tarte41:20170323223133j:plain
[コミケット53カタログ P.330より]

こちらもこの年の初出。意味はググって頂ければと思います。
この時期は特に三次元方面の意識の高まりを感じます。(ふわっとしたコメント)

【カタログ初出】SS

f:id:Tarte41:20170323221026j:plain
[コミケット52カタログside2 P.68より]

カタログ初出シリーズ、こちらは「SS(ショートストーリー)」です。
パソコン通信時代から使われていたと聞いたことがありますが
サークルカットに登場したのはこれが初。

【初登場】東方Project

f:id:Tarte41:20170323222039j:plain
[コミケット52カタログside1 P.302より]

今や説明不要のビッグタイトルに成長した『東方Project』がコミケ初登場。
Windows版ではなく、PC-98で出た「旧作」シリーズです。
サークルカットに書かれているURLは現在も機能していて
旧作の体験版をダウンロードすることが出来ます。
http://www.kt.rim.or.jp/~aotaka/

カップリング表記が出てくるのはWindows版の頒布を待つこととなりますが、
この約20年後の2016年冬コミではサークル数1,582、
カップリング表記数152(作品別20位)となっています。

「&」と「×」の使い分け

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[コミケット52カタログside2 P.186より]

『SLAM DUNK』の三井攻めリョータ受けサークルさんですが
「三×リョ」と「三&リョ」の2つの表記を併記しています。
このことから、記号の「×」と「&」に意味の差があるという認識が見て取れます。

「×はエロあり」「&は友情やエロなし」みたいな話も聞いたことがありますが
カップリング表記に単なる攻め受け以上の意味が付与されていることは確定的に明らかです。

1997年は「×表記」の使用率が60%以上と高い使用率を示しているので
この時期にこれだけ流行っている×表記を使わず、あえて他の表記を使っている時は
そこに書き手の強い意思が込められていると考えた方がいいかもしれません。

97-8:1997年まとめ

・『SLAM DUNK』8連覇!
・1開催で8,000サークル以上がカップリング表記を書くように
・「×表記が6割」

・「漫画・アニメ」の時代から「漫画・アニメ・ゲーム・アイドル」の時代へ
・三次元同人文化に変化の兆し

今回は以上です。
それまで特定の人気作品に偏っていたカップリング表記が、かなり広いジャンルで
使われるようになったことが、この時期のデータから見て取れます。
1997年はカップリング表記の裾野が広がった年と言えるでしょう。

次回は世紀末に向かって激変を迎える1998年のカップリング表記を
またまたガッツリ見ていきたいと思います。

ではまた次回!

同人誌

これまで調べたカップリング表記情報は『カップリング表記データブック』という
同人誌にまとまっていますので、よろしければこちらも。

◆COMIC ZINさんに委託中です◆
http://shop.comiczin.jp/products/list.php?category_id=5603